『パリ、ジュテーム』と『それぞれのシネマ』で短編作品を観ているはずなんだけど記憶に残っていないオリヴィエ・アサイヤス。
黒沢清とか青山真治とか、スカした監督どもがよく褒めるんだ。ヤダヤダ。
でも、そういうスカした監督どもが好きなもんだから、ずっと気になっていた。
しばしば見せる省略法とか、どこに話が行っちゃうんだか分からないレズ話とか、彼らの好みなんだろうなあ。
で、何故か5年も日本未公開だったこの映画。元妻のマギー・チャンを主役に迎えて作った物語は「再生の物語」と読み取っていいのだろうか?
一人の女性が一歩踏み出すという意味では再生の物語に違いないんだろうけど、
その単語から印象を受ける“乗り越える”物語というのとは違う気がする。
これは、悲しみを“乗り越える”というより、“受け入れる”物語のような気がする。
悲しみや苦悩、生きてきて経験した苦楽全てが、歌手としての歌声や歌詞に深みを与えた。
そういう映画なんじゃないだろうか。
そう考えると、ヤク中という設定も「母子再会の障害」以外にも意味を持ち始める。
“表現者”に必要なのは、何かの助けではなく、自分自身の内側に抱えた何かなのだ。
だけどさ、アーティスト論としては興味深いんだけど、一人の女性の人生という意味では、もっと壮絶な話を多く見すぎているし、全てが丸く収まりすぎている気もする。
嫌いじゃないんだけど、そんなに好きでもない。
何年か後には、やっぱり記憶に残ってないかもなあ。
日本公開2009年8月29日(2004年 仏=英=加)
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