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SUPER 8 スーパーエイト

super8監督:J・J・エイブラムス/吉祥寺バウスシアター/★3(56点)本家公式サイト

8mm映画はこうでなきゃ!という思いと、ひと夏の少年物はこうじゃねーよ!という思いが交錯する。
<<8mm映画はこうでなきゃ!>>

「The Case」だっけ?よくできた8mm映画である。この太っちょ映画少年は才能がある。大森一樹より才能がある。

まず「作ってる本人にとって楽しい作品」である。自主映画はそうでなきゃいけない。どうせ趣味なんだから。
そこに「物語に深みが出る」など観客の目もある程度意識している。趣味とは言え、映画は観客がいて初めて成立するからね。
そして何と言っても、ハプニングを映画に取り込む貪欲さがある。
映画制作は障害とハプニングの連続だ。自主映画ならなおさら。

私と友人がもう20数年前の学生時代に映画を撮っていた頃は(その時点で既に8mmは時代遅れで、コダックSuper8ではなくフジのシングル8を使っていたが)、歩道橋から渋谷警察を隠し撮りして捕まったり(翌週には渋谷警察前の歩道橋に目隠しが付けられ今日に至っている)、出来たばかりの都庁の地下で何度も撮影して何度も排除されたり(直後にあちこちに防犯カメラが設置され今日に至っている)ということが日常茶飯事だった。
なんだ、障害ばかりでハプニングを活かせてねーじゃねーか。
だいたい8mmカメラってのは、ビデオカメラみたいにオートフォーカスもなければ手ぶれ補正もないからね。露出だって自分で操作しなきゃいけねーんだよ。夜の撮影であんなに綺麗に撮れるわけねーじゃねーか!どんだけ照明たいてるんだよ!しかも列車通過真横の同録で!どんだけ高性能の指向性マイクなんだよっ!

あれ?

<<ひと夏の少年物はこうじゃねーよ!>>

「ひと夏の少年物」というジャンルがある。
ひと夏の経験(それはしばしば痛みを伴う)を経て少年が成長する映画だ。
ちなみに「ひと夏の少女モノ」ということになると、まあ『耳をすませば』的なこともあるが、「誰でも一度だけ経験するのよ誘惑の甘い罠」という山口百恵的な事のほうが個人的にはしっくり来る。
要するに、少年少女を問わず「大人への階段を一歩登る」というのが“ひと夏の経験”の定番。
日米問わず、夏休みは冬休みと根本的に違うようだ。あまり冬休みの成長譚というのを聞いたことがない(冬は事件向きではあるんだけど)。

そして“ひと夏の経験”ってのは“秘め事”なんだな。

例えば『スタンド・バイ・ミー』。
ぶっちゃけくだらんノスタルジー物だが、これは少年達だけの冒険という“秘め事”が主軸だった。
例えば『E.T.』。
最終的に国の機関(だったかな?)が絡んでくるが、せいぜいソイツらどまりで、基本は少年達の“秘め事”で、この映画みたいに無関係の民間人の死傷者を多数出すことはない。
例えば『妖怪ハンター ヒルコ』。
“人知れず”事態を解決し“人知れず”悲しみを乗り越え入道雲の浮かぶ青空を見上げる、正直、これ、傑作。
例えば『卒業』。
少年と言う年齢の話じゃないが、定型的な“ひと夏の秘め事”を経て成長をつかむ物語である。

人は、秘密を抱えて大人になる。大人になるということは秘密が増えることなのだ。
ところが、この映画には全然“秘め事”の要素がない。
無理やり母のペンダントを手放すことで少年の成長を描写しようとしているが、前提である“秘め事”が存在していない。

少年達が事情を知るのは、我々観客よりずっと後で、やっと現像が上がってきたフィルムは観客や登場人物への「正体バラシ」以外に役に立っていない。そういや軍はフィルムの空き箱を手がかりに拾ってなかったっけ?何の意味もない。
この映画なら、誰よりも先に少年達“だけ”がソイツの正体を知ることが話の起点じゃなきゃいけない。
お父ちゃんの保安官補佐だっけ?代行だっけ?見習いだっけ?が活躍しちゃダメだよ。
それとついでに言えば、この保安官なりそこないの父ちゃん、奥さんが死んだのを他人のせいにして「エル・ファニングと会っちゃいけない」なんて、なんて心の狭い男なんだ。正しい子供映画の場合、こういう身勝手な大人は怪獣に食われて死んじゃわなければならないはずだ。

実は、スピルバーグ自身が監督する場合、意外と少年の成長物は少なく、バンバン民間人を殺しまくる映画、例えば『宇宙戦争』や『ジョーズ』なんかは、徹頭徹尾“恐怖映画”で、大人視点の映画だったりする(『宇宙戦争』はパパ視点だけど)。
スピルバーグの凄い所って、そういうツボをちゃんと押さえてる所だと思う。
そしてアイディアだけ思いついてもツボを外しそうな場合は、製作か製作総指揮に回るという(笑)。

売れっ子J・J・エイブラムスはスピルバーグが大好きだそうだが(特に『ジョーズ』が好きだそうだが)、“上っ面の面白さ”しか学んでない気がする(テレビ物は知らんが)。
『妖怪ハンター ヒルコ』を観て出直した方がいい。もしくは『(本)噂のストリッパー』(<ひどく間違ったことを言っている)

日本公開2011年6月24日(2011年パラマウント)

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