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スマグラー おまえの未来を運べ

スマグラー監督:石井克人/新宿バルト9/
★3(60点)本家公式サイト

松雪さんが美しい。満島ひかりが超カワイイ。実は役者でしのいでる映画。
最近、嵐の大野くんが金持ちのボンボンで「チョコもビスケットも食べたい!」とメイドの仲間由紀恵に駄々をこねるCMがあって(森永の「チョコビスケット」という商品だそうだ)、今時っぽくない「えらくツマランCMだなあ」と、なんだか90年代っぽい妙ちくりんさが気になっていた。
調べたら演出は石井克人。
『スマグラー』を観て確信したよ。この監督の頭は90年代で止まっている。
冒頭「666」がひっくり返って「1999」になるでしょ。
「666」という数字に意味があるならいいけど、特にないじゃない。
ああいう無意味なスタイリッシュさって、バブルの匂いがしちゃうんだ。

決してツマラナイ映画ではないのだが、確実に『鮫肌男と桃尻女』より監督の腕は落ちている。
良く言えば「落ち着きが出てきた」(<そうか?)
いやあ、序盤の雰囲気なんかはとてもいいんですよ。

しかし実態として、この映画を支えていたのは役者だと思う。
まあ、それはもちろん監督の演出でもあるんだけど、基本的に全員「オーバーアクト」を求められ、おそらく期待以上の水準で役者陣が応えている。
まったく勝手な推測だが、そう見える。
この監督は絵コンテをきっちり書く人で、おそらくそれはガッツリ漫画的な“表情”まで描かれていて、各役者が怪演や抑えた演技でそれぞれの役割を全うしているんだと思う。

悪く言えば、この映画に観客を引き込んでいるのは“役者”であって、“話し運び”や“映画的なシーン”といった映画的な演出ではない(少なくとも私には)。
もっと悪く言えば、「やっぱりやりたいんだろう」と思われる“過剰演出”は、先に述べたように、『鮫肌男と桃尻女』より劣化していて、逆に「まだそんな事やってるの?」という古臭い印象を受けてしまう。
中島哲也のガチャガチャ演出は確実に成長していて、そのシーンにその演出が“必然”であるかのように見せてしまうのに、石井克人のそれは「やりたいだけ」に見えてしまう。

そもそも話として、安藤君演じる背骨を倒すことと、ブッキー演じる砧の救出劇がリンクしてない。
ブッキー、自己解決しちゃってんじゃん!
百歩、否、千歩譲って自己解決を認めたとして、それはキョンキョン元旦那の言葉じゃいけないと思うんですよ。

脚本が意識してるのかどうか分からないけど(たぶん意識してないと思う)、この話、「砧と背骨が交錯する物語」だと思うんです。
「砧=背骨に成り切って危機脱出」、「背骨=死に際に砧に礼を言う」という描写があるんだけど、それが原作通りなのかどうかは別として、二人の人生は「荷台」で交錯するわけですよ。

ここにはもっと深い背景があって、「死を恐れる(死が分からない)殺し屋」と「生き方が分からないフリーター」というキャラの二人が交錯することで、「死を知る」ことと「生きることを知る」という結末を迎えるんだと思うんです。
それが「第2章:荷台」で交錯する。言わば、序破急の「破」に当たる。
少なくとも、そう読み取るべき設定が組まれている。

だけどねえ、そのためには二人の描き込みが圧倒的に足りない。
サブキャラ濃すぎるせいもあるけど、島田洋七親分のタバコうんぬんのクダリなんかに割く時間があったら、もっと他に描くべきことがあったろうに。

結局やりたいだけなんだろうなあ。

2011年10月22日公開(2011年 日)

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