ただの新商品の発表会じゃないんですよ。自衛隊の最新鋭ヘリですよ。国防に関わる軍事機密ですよ。それを子供が簡単に近づける、しかも乗り込めちゃう。なんだこのズサンな会社。この会社の体質を糾弾すべきだね。こんな会社に仕事を依頼した防衛庁も糾弾されるべきであって、仮にこの事件をマスコミが「原発どうこう」って切り口で取り上げたら「そこじゃねーだろ!」って誰もがツッコむよ。
この映画、ツッコミどころ満載で、「箱の大きさは!?」「洗濯機くらい」って、大人だって咄嗟に思い付かないような例えを子供がズバリ言い当てるご都合主義。そんなサイズの箱にダイナマイト10本しか入ってないんだってよ。Amazonの梱包かっ!
なんだかヘリコプターの甲板はほぼ無風みたいだし、子供の不確かな記憶と修理したばっかで本当に使えるかどうかも分からないリモコンに運命を託すし、しかも昔の携帯電話で電波探すみたいにヘリコプターから身を乗り出して「電波届けー!」ってやるんだぜ。スゲーな。真面目に映画作ってるとは思えんな。
いやもう、原発の安全性以前に、第三者が乗っ取れちゃうような兵器が自衛隊に納品されようとしていたことの方が恐ろしいし、安全装置もついていない警官の拳銃の方が恐ろしいわい。
こうしたボコボコでスタボロの穴凹ぜーんぶを百歩譲って、いや、2億4千万歩くらい譲って目を瞑ったとしても、やっぱりツマランのです。
この手の話って“ロック”じゃないと面白くないんですよ。『太陽を盗んだ男』とか。ところが東野圭吾の話って、どっちかっていうと“フォーク”的な気がするのです。人情話というかね。福井晴敏だったらまた違ったでしょうがね。『亡国のイージス』ですらこの映画と比べたら神々しく感じますよ。
三池の『藁の楯』のようなスケール感も緊迫感もワクワク感もない。
阪本順治の『KT』のような熱量も感じない。
ましてや、このジャンルの最高峰として誰もが認める『新幹線大爆破』の千葉真一や宇津井健のような職業人としてのプロ意識も感じられない。
底抜け感すら『東京湾炎上』に及ばない。
そして“珍作”にすらなってないからタチが悪い。
2015年9月12日公開(2015年 日)
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