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日日是好日



仲よき事は美しき哉(<何となく言いたかっただけ)


監督:大森立嗣/ヒューマントラストシネマ渋谷/★4(71点)本家公式サイト
この映画と同じ「表千家」をウチのヨメもかれこれ20年くらい習ってて(ちなみに茶道のドメジャーは「裏千家」ね)、実際先生に言われるそうですよ「10年もやってるんだからもう少し工夫しなさい」って。映画でも同じこと言われた、言うとりましたわ。劇中「この茶碗を次使う時はいくつ?」みたいなことを樹木希林先生が言いますが、ウチのヨメの先生は102歳までお稽古つけてたそうですよ(つい先日亡くなったけど)。

これ、撮影大変だったろうな、と思うのです。

私もある事情で「江戸千家」の先生の取材に立ち会ったことがあったんですが、写真一枚撮るにも「お道具の位置」「掛け軸の種類」とか細かくチェックされてましたよ。
特にこういう世界は知ってる人が見るから。ウチのヨメですら、この映画に登場するお道具の銘や掛け軸は分かったらしいもの。

じゃあお茶の世界を知らない人がこの映画を観るとどう思うの?とも思うのです。

ちなみに私は多部ちゃんを見に行ったので、多部ちゃんと黒木華ちゃんがワチャワチャしてるのを見るだけで楽しかった。仲よき事は美しき哉。女子大生の多部ちゃん。和服の多部ちゃん。ウェディングドレスの多部ちゃん。あー、楽しかった。日日是好日。

茶道映画って勅使河原宏の『利休』くらいしか頭に残ってなかったので、この映画がずいぶん「ふわふわ」しているように見えたんです。前衛芸術家=勅使河原宏の画面は静謐というか冷徹な印象じゃないですか。でもこの映画の“茶道”は違ったんですね。
劇中、鶴田真由が言う“時代”の違いかもしれませんし、男茶道と女茶道の違いかもしれません。ただ、軽すぎもしないんです。ちょうどいいふわふわ感。
監督の麿赤児の息子・大森南朋の兄貴に対して私の信用度は低いんですが、この映画は珍しくいい感じに仕上がってる気がするのです。
だって彼の映画は基本的に画面作りが重いんですもの。

例えばこの映画の冒頭、子供の頃の主人公が家族でフェリーニの『道』鑑賞後に家に帰ります。
カメラはそのまま玄関ドアに寄り、年月が経って、大人になった黒木華ちゃんが出てくる。
この玄関にスーッと寄るカメラが「これがこの家族の最後の幸せな姿でした」「この後、この一家は惨殺されました」みたいな寄り方なの。分かります?ヒッチコックの『フレンジー』みたいなんだよ。

しかしまあ、さすがに監督もこれが一家惨殺事件ものじゃないことは分かっているので(<当たり前だ)、努めて明るく・軽く仕上げたつもりが、持ち前の重さとブレンドされ、結果としていい具合になったんじゃないかと勝手に思っています。
象徴的なのが、全体的に画面(特に空)は暗いんですが、茶室の窓の外だけは明るい。

『セトウツミ』と似てるとも思うんです。

一本筋の通ったストーリーではなく、発生する事態はフレームの外で起きる。
世界の中心は「お茶と私」(男同士の会話劇)であり、彼女(彼)の人生の転機は直接描写されない。
たまにはこういう映画もいいと思うんですよね。
いつもこんなのばっかりだと、刺激が欲しくなりますけど。

余談

このコメントを書いた後で、松江哲明フェイクドキュメンタリーTVドラマ「このマンガがすごい!」の東出昌大「龍-RON-」の回を観たんですね。
言わずと知れた剣道漫画ですが、自身も剣道をやっていたという東出昌大にナビゲーターの蒼井優先生が聞くんです。「剣道、好きですか?」。すると東出昌大が答えるのです。「好き、ではないですね」

この映画でも、親の言葉を借りて茶道が好きかどうか問答が出てきます。「好きなんじゃない?続けてるんだから」。しかし最初の頃の華ちゃんは「休んじゃおっかな」的なことを言います。
しかし華ちゃんはその後何年も茶道を続けますし、「龍-RON-」の東出昌大は自らこの原作を選び、自ら進んで役作りのために剣道を練習します。

ここに日本の“道”の真髄のような何かがある気がするのです。
実際、この映画でも「形から入って後から心が入る」ということを言います。
「好きだから続ける」「好きこそものの上手なれ」という“常識”は意外と最近のことなのかもしれません。
だって、それを端的に表現する単語は「モチベーション」だもん。まあ、「やる気」「動機」とも言うけど。
そう考えると、“道”の世界を表現する単語は「境地」かもしれませんね。これは仕事でも人生でも同じこと。年齢を経てくると分かります。モチベーションより境地。



2018年10月13日公開(2018年/日本)

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