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キングダム



あのね、ものすごいネタバレ書くよ。『クローズZERO』に相川七瀬が出てきて歌う映画(<大嘘)

監督:佐藤信介/TOHOシネマズ錦糸町・オリナス/★3(55点)本家公式サイト

我が家で佐藤信介は信頼のブランドなんです。
本格ゾンビ物『アイアムアヒーロー』はもちろん、遡れば、秀逸なラブコメ『図書館戦争』シリーズ、サラリーマン悲哀物の傑作『GANTZ』辺りから信頼度が高くなった。
週刊連載漫画の「最強の敵に次ぐ最強の敵」っていう敵のインフレが嫌いなので、佐藤信介じゃなかったら絶対観ないジャンルの映画。あ、三池崇史だったら観てる。

思い返せば、当時は批判していた釈由美子の『修羅雪姫』が佐藤信介との出会いでした。たしかアクション監督はドニー・イェン。今思うと凄いな。だってイップマンだぜ。ある意味原点回帰。何度も何度も「修羅の道」って連呼してるし(<たぶん違う)。こんなに「修羅の道」を連呼するのは梶芽衣子以来だ(<どうでもいいネタ)。
さらにどうでもいいことを書くと、佐藤信介の橋本じゅんは福田雄一の佐藤二朗だよね。

佐藤信介を信頼する理由は、カメラが人間の視線の範疇にあることです。山崎貴みたいにグリングリンあり得ない位置にカメラが移動したりはしない。この映画では唯一、宮殿の全景を見せるためにカメラがグーッと上昇しますが、これから攻めるルートを観客に説明する目的です。後にも先にもそれだけ。「埋めつくすほどの大軍」という描写も、ちゃんと人がいる位置から見下ろしている。
もっと言っちゃえば、冒頭に砂漠を移動する馬車というすごい引きの絵があり、次のカットは主人公(少年時代)の目のドアップ。かなり極端な切り返しで「馬車の中の人物」であることを描写しつつ、「この映画の主人公は彼ですよ」「彼の目(視点)で物語は進みますよ」と宣言しているのです。初めて大沢たかおを見るシーンは彼の視線の先として描写され、その後大半が主人公の目(主人公が知りうる範囲)で話が進行します。
実際には都合上、敵側の描写(主人公不在の場面)も出てきますが、それだって「神の視線」ではなく「人間の視線」で常識的に描写します。これが山崎貴だったらカメラがグォーンと宙に舞ったりする。なんだそのクソみたいな演出。思えば『ALWAYS 三丁目の夕日』なんかに賞をやるようになってから日本という国がダメになった気がする。

いやいや、ここで『ALWAYS 三丁目の夕日』関係ないじゃん?と思うでしょ。
ここを起点に、『キングダム』の物語を読み解いていくんですよ。佐藤信介の演出とは一切無関係だけどね。

今の日本をダメにしている年寄りどもが『ALWAYS 三丁目の夕日』にしがみついていた頃、若者は既に『ONE PIECE』の時代になっていたのです。
『ドラゴンボール』に代表されるような「修行して自分が強くなる」ことが大きな物語だった時代から、『ONE PIECE』によって「仲間とともに成長する」ことに変化したのです。
これは大きな価値観の転換です。

しかし、若者は気付いてしまうのです。
ともに成長する「仲間内」が世界の中心だと思っていたら、外の世界に巨大な恐ろしい敵(大人たち)がいたことに。それが『進撃の巨人』です。
『ALWAYS 三丁目の夕日』にしがみついた巨人は、そのまま昔のアメを舐め続けていてくれればよかったのですが、その後も若者を食い物にします。世界は変化したのに、昔の価値観を押し付け、若者を潰していくのです。

『キングダム』もその延長線上にあります。

この映画はやたら「夢」「夢」言います。寝ても覚めても、まるで夢にうなされているように「夢」の連発。その都合上、夢を抱く若者が何かを掴み取る物語になっていますが(それは『バクマン』同様決して悪いことではなくむしろあるべき姿なのですが)、「夢なんかみるから無様に死ぬ」「夢見る少女じゃいられない」という映画のセリフもまた現実なのです。
あるいは、若者の夢も何もかんも全て大沢たかお(=大人)の掌で踊らされているだけ、という映画なのです。
結局、若者は恐ろしい大人の食い物にされているだけ。アイドルの握手会だなんだと甘い夢につぎ込んだお金は秋元康の懐に入るだけ。ゲームの課金もアニメグッズもごく一部の大人たちに搾取されて「最高の女とベッドでドン・ペリニヨン」の資金源になるだけ。なに?浜田省吾を知らない?そんなんだからお前ら若造は「奴隷生活」から抜け出せねーんだよ。

という映画。大人って怖い。



2019年4月19日公開(2019年 日テレ・東宝)

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