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冬時間のパリ



オリヴィエ・アサイヤスの「文学部唯野教授」。


監督:オリヴィエ・アサイヤス/渋谷Bunkamuraル・シネマ/★3(68点)本家公式サイト

原題は「Doubies Vies」。英訳すると「Double Lives」(英題はNon-Fictionらしいけど)。2つの人生とか二重生活とか、Vie(Life)を人生と訳すか生活と訳すかですが、それも含めてダブルミーニング以上に多様な解釈が可能な意味深なタイトルです。なに?この邦題?

映画は、文字通り2組の夫婦の、それぞれ互いの知らぬ一面(二重生活)と人生を描くことを軸とします。いや、これは横軸で、縦軸として「ストーリーと評論」のダブル表現をテーマとしています。構成もまたダブルの映画なのです。

筒井康隆「文学部唯野教授」は、大学教授の日常を描く「ストーリー」と唯野教授の講義の体で「筒井康隆の文学論」が描かれました。
この映画も同じです。
2組の夫婦のストーリーと、登場人物の会話の体で「アサイヤスの現代批評」が展開されるのです。

アサイヤスの現代批評は出版業界を舞台に語られます。
デジタル化に未来がある。必ずしも好意的でない解釈もある。しかしアサイヤスは自己主張しません。白黒付けずに両論併記します。
「変革期」「過渡期」と何度も言い、「権威」という呼び方で「既存の価値観」を表現します。

穿った見方をすれば、映画業界の暗喩にも思えます。
Netflixなどの配信。既存の価値観としての配給。権威である映画祭が配信作品を排除する現状。
しかしアサイヤスは何も主張しません。
おそらく彼が言いたいことは、この映画の登場人物たちの如く「収まるところに収まる」ということなのかもしれません。
そう考えると、実に劇的な設定にも関わらず、自然体の映画にも思えてきます。



日本公開2019年12月20日(2018年/仏)

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