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劇場



太宰治風「リフレインが叫んでる」。映画少年行定勲の繊細な腕力。

監督:行定勲/アップリンク吉祥寺/★4(72点)本家公式サイト
 
背景に電車が走っていることが多い。その印象が強く、どうしてだろう?と思ってたんです。偶然ではなく、意図的に写し込んでいると思うのです。

終盤(ほぼ終わり近く)、「特急列車に乗って出かけよう!」みたいな舞台台詞が出てきます。続いて「海外でウンヌン」とも言うのですが「飛行機に乗って」とは言わない。私の思い過ごしかもしれませんが、「特急列車」も意図的に使用した単語に思えるのです。そしてこの「特急列車」発言は、“希望”であり“果たされない未来”を語った言葉なのです。

さて、ここからは私の勝手な推測です。

もしかすると、「ここではないどこかに行きたい」という心象風景が電車だったのではないでしょうか。でも、同じ列車に乗れなかった二人の物語。果たされなかった希望。
そういや、映ってるのは井の頭線や山手線だ。悲しいかな、最初からそう遠くへは行けない電車なんです。せいぜい吉祥寺まで。あ、吉祥寺って又吉のホームグラウンドだ。
あと、どーでもいー話だけど、下北沢と高円寺って同じサブカルでも微妙に文化が違うんだけど、分からない人にはスンニ派とシーア派くらい違いが分からないよね。

ほぼ最後、部屋の片付けをしながら二人が思い出の台本を読み合うシーンがあります。
このシーン、切り返しのお手本、教科書のようなカット割りなんですよ。
舞台の台本を読んでいるから舞台的なショットにしたくなるところ、あえて丁寧な切り返しを重ねて、二人を同じ画面に納めないようにしているんですね。
結果、(ネタバレになるから詳しく書けませんけど)その後の展開の前フリだったんです。

例えば、自転車二人乗りの長回し。映画的運動を存分に発揮した撮影。
つまり、ここぞって所で、舞台演劇には出来ない映画的な演出を盛り込んでいるのです。

巧いんですよ。私は行定作品を見る度に「映画的手法の引き出しが多い」といつも思うんです。「またこのパターンかよ」みたいなことがまず無い。天賦の才というより、知識豊富な映画少年って印象ではありますけど、こういう映画少年っぷりは嫌いじゃない。

話変わって、今回初めて(今さら)気付いたことがあります。
行定作品は「繊細な男子」が主人公であることが多い気がします。
本当は次回作のキュウソネコカミだかチーズはどこへ消えただかで書くべきなんでしょうけど、松本隆的に言えば『微熱少年』の映画に思えるのです。熱血じゃなくて微熱。もちろんこの『劇場』も、『今度は愛妻家』ですらも。なんなら皆、天を仰いで「助けてください!」と叫ぶサクの延長線上なのです。
(もちろん、吉永小百合アイドル映画の大任を背負った『北の零年』とか大女優・芦田愛菜の『円卓』といった例外もありますけど)

そうした「繊細男子」を当代随一の美男子たちが次々と演じています。
ここで興味深いのは、同じ出演者(主演)がほとんどいないということ。
トリュフォーも「繊細男子」を描くのが好きで、まるで自己投影するかのごとくジャン=ピエール・レオに一任しますが、行定は同じ俳優を使わないんだよなあ。これはどういう意図なんだろう?

ただねえ、『リバーズ・エッジ』でも書いたんだけど、最近の行定は何を撮っても90年代に見えてくるんですよ。このままじゃ「何を書いても70年代」の荒井晴彦みたいになっちゃうぞ!



2020年7月17日公開(2020年/日)

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