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春婦伝

監督:鈴木清順/CS録画/★5(81点)(再鑑賞↑)/本家

清順の映画は「オペレッタ」だけではない。少なくともこの映画は「演歌」だ。「天城越え」だ。
20年くらい前に深夜の地上波放送で鑑賞して以来、従軍慰安婦が主人公であるためか、再放送はおろか、DVDの発売はもちろんビデオの再販すらされない埋もれた清順映画。ただ単に評判が悪いだけかもしれないけどね。今回CSでの放送で久しぶりの再会。

これを最初に観た私は大学生で清順初心者。まだこの映画の良さを理解するには若かった。

現在の鈴木清順は観客の望む鈴木清順たらんとして「ワケワカラン」ものを意図的に撮っている気配があり(ボケてるだけかもしれんが)、多くの場合、この「ワケワカラン」をもって「清順的」と言われている気がする。
例えるなら、『ピストルオペラ』『オペレッタ狸御殿』のタイトルにも記されている「オペレッタ」なのである。軽妙洒脱な喜劇。いや、あんまり軽妙洒脱でもないけどな。しかし、それが一般的に言われる清順映画のような気がする。
事実、大学生当時の私も「ワケワカランじゃない!」「むしろワケワカル!」という理由で、長らくこの映画に3点を付けていたのである。

ところが、清順映画を多く見ていると、もう一つの別な得意ジャンルがあることに気付かされる。
日活にいたこともありアクション(任侠含む)が最も多いのだが、意外と「(女の)情念」を中心に据えた「演歌」も得手としているのだ。
『ツィゴイネルワイゼン』に始まる大正3部作や『けんかえれじい』などもこの部類に入ろう。

たいがい「演歌清順」は評判が良く、「オペレッタ清順」は評判が悪いというのが相場である。私もそれは否定しない。実際「演歌清順」を見ている人の方が多いはずだ。
ところが、見た目の「ワケワカラン」で、清順映画はみんな「オペレッタ」と思われがちだ。それは違う。この映画を含む「野川由美子3部作」は女の情念を描いた「演歌」だ。この映画は「近松心中」にも似た「ド演歌」だ。天城越えだ。

この映画の清順的「ワケワカラン」には、ちゃんと意味がある。
効果として過剰な面も否めないが、ありきたりな表現では鈴木清順ではない。
そうでなければ凡庸な映画で終わっていただろうし、「オペレッタ」だけではこうは長続きしなかったろう。
鈴木清順が映画史に名を残したのは「ワケワカラン演歌」であり、その代表作は大正3部作と、この映画を含む「野川由美子3部作」に違いない。これは清順ファンの単なる入れ込みだが。

1965年2月28日公開(1965年 日活)


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