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フリージア





監督:熊切和嘉/渋谷アミューズCQN2/★3(57点)
本家goo movie公式サイト

メジャーになれる要素満載なのに、わざとマイナーに落とした感じがする・・・
原作マンガは全然知らないのだが、おそらく原作は連載マンガなんだろうなあ、と観ていて思う。

例えば「幽霊」と呼ばれる男のエピソード。
推測するに、連載中は見せ場の一つなのだろう。
だが2時間弱のストーリーに納めた場合、その物語上の意味は、「痛みを知れ!」と主人公に言葉を投げつける役目(=主人公に何かを気付かせる役目)でしかない。
映画は物語をいかに収束させるかに力点を置く。だがマンガは多くの場合「いかに連載を続けるか」に力点が置かれる。要するに、設定はともかく、原作のエピソードに振り回されると映画は物語として破綻しかねない。

さらに今回初めて気付いたのだが、「何を考えているか分からない殺し屋」というのは映画の主人公には向かないのではないだろうか?そういうゴルゴ的キャラが通用するのは実はマンガだけなんじゃないだろうか?

映画でも小説でも、こうしたキャラが活きるのは「敵役」。敵に回して最も怖い存在。
仮にこうしたキャラクターを主人公にした場合は、狂言回し視点でストーリーが展開される方が妥当だ。
ところがこの映画、狂言回したる存在のもう一人の主人公が謎の女ときたもんだ。
これじゃもう観客には「雰囲気」しか伝わらない。
雰囲気だけで押し切るのはしょぼいフランス製ミステリーで充分だ。この映画がどことなくフランス映画の雰囲気を持っているのは、そんな原因もあるかもしれない。

そう考えると、この映画で最も感情移入できるのは西島秀俊演じるトシオということになる。
残念ながらこの話、大変狭い人間関係の中でのみ話が展開してしまっている。「渡る世間は鬼ばかり」の方がよほど人間関係が複雑じゃないか。その狭い人間関係の中で、元少年兵という身分が彼の戦闘動機となるわけだが、たぶん俺なら違う設定にする。
自分は事件に関係ないのに、敵討ち不能の父親の代わりにターゲットとされる理不尽な設定のみ背負わせたい。
その不条理感がこの設定をSFとして活かせると思うのだ。
これでは単に「銃撃戦をやりたいだけ」の設定に見えてしまう。
いや。その銃撃戦がピカイチだから、それはそれでいいんだけどね。
随所に「スゲえ!」と思う描画が多々あるだけにもったいない気がする。

さらにこの映画、「凍った心が溶けるまでの物語」と読み取れる。
欲を言えば、溶けた心が沸点に達してクライマックスを向かえてほしかった。
流麗なアクション(銃撃戦でもいい)は、主人公の気持ちが乗る(爆発する)ことで、観客のエクスターシーになるのだから。

どうしてあんな日本映画にありがちな終わり方なんだろう?惜しい。ホントに惜しい映画だと思う。

2007年2月3日公開(2006年 東宝、小学館他)


comments

コメント&TBありがとうございます。
いやあ、的確な映画評を書かれていますね。
私もこの映画はおっしゃる通りだと思います。

  • ペペロンチーノ
  • 2007/02/08 2:45 PM

コメント&TB失礼します。

>例えば「幽霊」と呼ばれる男のエピソード。
推測するに、連載中は見せ場の一つなのだろう。

僕も原作コミックを知らないのですが、
おそらくその通りだと思いました。
ある程度の期間連載したものは、
映画の尺では難しいですね。
幽霊を掘り下げればもっと面白かったように感じます。

   

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フリージア@アミューズCQN

時代設定が過去や現在のものと比べ、未来はルールを自由に決められる点で融通が利く。さながら法をつかさどり、敵討ち法という復讐が合法化した近未来を描く。「青春☆金属バット」に続いて熊切和嘉はまた漫画を題材に選んだ。 戦災孤児を実験台にして瞬間凍結爆弾の

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