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迷子の警察音楽隊




監督:エラン・コリリン/シネカノン有楽町2丁目/★3(51点)
(本家/goo movie公式サイト

パンとワインの物語。それで?
最初に言っておきますが、正直、「それで?」というのが率直な感想。
典型的な「鶴の恩返し」パターンですが、単に迷子がやって来て帰る話としては、大した騒動も残していったものも無い。これと言って(お互いに)何か大きな変革が起きたように思えず(全く何も起きないわけではないのですが)、期待すべき「その先の物語」が見えない、何か「食い足りない」思いがしたのです。
だから、「それで、どうなったの?」と、いうことでこの点数。

そこで少し視点を変えてみましょう。
冒頭に字幕が出るんです。
「エジプトの警察音楽隊がイスラエルを訪れたことはもう誰も覚えていない」みたいな。ウロ覚えですけど。

とぼけた味わいのささやかな異文化交流がウリのようで、それはそれでいいんですが、この冒頭の字幕には大きな意味、いわば影のテーマが隠されているように思えるのです。

こんな字幕出さずともストーリー上で自然に見せられたはずですし、ただの隣国でもどこの国からの訪問者でもよかったはずなのです。ましてや「誰も覚えていない(忘れられた)」ことなど明示する必要はないのです。
おそらく、「エジプト」「イスラエル」これらは意図的に明示されているのでしょう。

かつて長い年月抗争を繰り広げた、血塗られた歴史を持つ両国の“忘れられた交流”。
この映画の本当の意図はそこにあるように思えるのです。

食堂の女主人は、食事と宿を与え、ワインを勧めます。
まるでキリスト教の聖餐(せいさん)。ユダヤ教では何と言うのかしりませんけど。
そして、自分自身はリンゴやスイカを食べる。まるで砂漠のオアシス。
彼女は、いわば女神なのです。
その女神が「オマー・シャリフが好きだった」「エジプト映画に憧れた」と口にします。
イスラエルの女神がエジプト人に愛を与える物語のようにも見えるのです。さあ、だんだん宗教じみてきたぞ。

さて、すっかり大風呂敷を広げてしましたが、私には畳めません。最初に述べた通り、私は「その先の物語」を読み解けなかったのです。
“忘れられた交流”の先、言い換えれば、現在の“イスラエルとエジプトの関係”が分からないのです。
要するに、俺のレビューそのものが「それで?」って話しなわけです。

おそらく、制作者側(当事国の人々)には“自明”のことなので、あえて映画上で「その後」を描写しなかったのでしょう。
ですから、事情を知らない我々は「単なる迷子がやって来て帰る話」にしか見えず、それだけなら「食い足りない」思いが残ったのです。たぶん。

“今”(あるいはその後)を理解した上で見る“あの時の話”だったら、だいぶ感想は変わったかもしれません。

日本公開2007年12月22日(2007年 イスラエル=仏)

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